貨幣錯覚
今回紹介する心理効果は『貨幣錯覚』です。
貨幣錯覚とは『お金の実質的な価値ではなく、お金の名目上の価値(表面上の価値)に着目してしまう現象』です。
例として、2023年から2024年の1年間でインフレ率が5パーセント上昇した場合を考えてみます。
この場合、2023年での1000円と2024年での1050円は同じ価値になります。
ここで、たくみ君のバイトの時給が2023年では1000円だったところ、彼の頑張りが評価されたのか時給が30円上がって、2024年では1030円になりました。
お金の名目上の価値に着目すると、時給が3%上昇しているので喜ばしいことのように思えます。
ここが落とし穴で、確かに時給の上昇は喜ばしいことですが、手放しにこの状況を喜んではいけません。
なぜなら、2023年から2024年にかけてインフレが起きてしまっているからです。
貨幣の実質的な価値に着目すると、2023年での1000円と2024年での1050円は同じ価値なので時給が上がって1030円になってもそれは2023年での1000円の価値も持ちません。
つまるところ、彼の時給は下がってしまっているのです。
このように、名目上の貨幣の価値だけに注目してしまい、『実質的にはマイナスだがプラスに見えてしまう幻想』に惑わされてしまうことがあります。
時給が上がったときには、特に企業が時給が上がったことを誇らしげにおっぴろげにして、アルバイトを集めているときには『なぜ時給が上がっているんだろう?』と一回立ち止まれば『インフレのせいで企業側のコストが何も変わっていないからか、、!』ということに気づけるかもしれません。(純粋にアルバイトがなかなか決まらないから仕方なく時給を上げている場合もある)
貨幣錯覚は『インフレ率やデフレ率という複雑な計算を直観的にはできないが時給の上昇という単純な計算なら直観的にできてしまう』という情報処理の容易さが原因だと考えられます。
簡単な足し算なら一目で理解できますが、掛け算(しかも分母付きの)の計算では出来れば電卓を頼りたいもので、一目では答えが導けないものです。(1000+30は?じゃあ、1030×100/3は?)
以上貨幣錯覚の紹介でした。
参考書籍
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