『言葉のいらないラブソング』の感想文です。
この本を既に読んだ方を対象としてます。
つまり、ネタバレ注意!
言葉のいらないラブソング
この物語は自分の”普通さ”を周りと比べて実感し、それのせいでうまくいかないと考えている男性ミュージシャンアキと、自分が周りと違って普通のことができないことを引け目に感じている莉子が出会い、恋をする物語だ。
あらすじはここまででここからは自分が共感したり、心に残った言葉やシーンを紹介する。
名シーン
まず、始めの莉子の心情だ。
自分は当たり前なこと、普通のことができない。
だからこそ、莉子は『やらないことリスト』なるものを作っており、自分がやって”しまった”ことをそこに書き留める。
その後、ロンドンで上司といろいろあった後に、やらないことリストを追加しようとしたときに、『書くことで罪の意識からにげているだけだ』と自らの行為の裏側に気づくシーンがある。
すっごく共感した。
生活する中で遅刻をしてしまって怒られたり、意図せず本音を語ってしまって人を傷つけてしまったり、相手の気持ちを考えずに行動していたことに後になって気づいたり、、
そんなことを書き留めていたことが自分もあった。
それによって『よし。今度からは気を付ける』と心の中で誓うのだが、その今度はやってこない。
気づくのは後だ。
後になって、『またやってしまった、、』と気づく。
それで自分を責める。
そんなことをいまだに繰り返している。
はじめからネガティブな共感になってしまった、、
次に、莉子がロンドンから帰ったあと、真紀子さんのバー『closed』に訪れるシーンだ。
そこで、ロンドンでの莉子の話を聞いた真紀子が、大切なことは周りがどう思うかに流されることなく、自分が何をしたくて何をするかであることを莉子に伝える。
それを聞いた莉子が自由とは何たるかについて結論を出す。
自由とは『自分がやりたいことを自分の意志で選択できること』
それが彼女の結論だ。
これは、まわりが提示する楽しそうなことに惹きつけられるのは他人にナッジされているという点で自由ではないということだ。
選択権はこっちにあっても誘導にひょいひょい乗っているようじゃ選択権はあってないようなものなのだ。
だが、他の人が提示する楽しそうなことを断るのは難しい。
誰かの提案にNOと言うのは、2本に分かれる道の一方を自らの手でふさぐような行為だ。
すごく、怖い。
そして、NOというのはそれだけでストレスでもある。
人をがっかりさせてしまうからだ。
だが、すがすがしい。
自らの信念に従い行動できる喜び。
本当の自由を手にした喜び。
その存在を強く感じた。
次に祐介にアキが自分の音楽の方向性について相談するシーン。
そこで、祐介は『くだらねえ』と言う。
そして、励ましの言葉と言うより本心を数々の言葉にしてアキに伝えるがそのなかの1つに『あいつらは責任が取れないから具体的なことをいわない。だからそんな言葉気にするな』という旨の言葉がある。
なるほどな。と思った。
確かに、人が人にアドバイスをするとき、『こうすれば解決するよ。』と、どの道を選べばよいのかとその道の先が分かっている場合もあるが、そうでない場合もある。
学校の勉強でもない限り大体の問題は後者だろう。
どんな道があるのかもわからず、ましてや道の先なんてわからない、そんなことが多くある。
そんな中、『あいつが通る道は間違っているかも』と”思い”それを伝えるため動くことがある。
だが、正解の道はわからないから明確なアドバイスができない。
だから、つかみどころのない抽象的なアドバイスになってしまう。
アドバイスを受けた側はどうすればよいのだろう。
自信を持って自分が正しいと思えることをやる。
それが正しいのだと思う。
どうせなにをやったところでどこかの誰かは文句を言うだろう。
だったら、周りが嫌な顔をしていても、自分が心から満足できるようなこと(周りを傷つけない範疇で)を行うことが正しい。
そんなことを思った。
アドバイスを聞く基準の一つは『具体性』もう一つは『責任』なのかもしれない。
やっぱり河邉徹さんの本、色んな共感もできるし新しい考え方も与えてくれるしで好きだなー。
またいつか、またどこかで、読みたい。
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